東京で一応の仕事を終えて、15日午後5時の新幹線「ひかり」に乗る。米国レールパスは「のぞみ」に乗れないのだ。この「ひかり」は岡山で終着。岡山からは特急寝台「なは」に乗り換える。1時間の待ち時間を駅の裏のラーメン屋で費やす。この日のために選んだ翌朝7時10分の熊本着は、インターネットを駆逐して調べた最良のJRの組み合わせなのだ。駅では富さんとユカさんが迎えに来てくれた。釣り道具一式をそろえてもらい、一路川辺川へ。車中一睡もできなかったが、そこはそれ、やりたいことがあればおめめもパチンと開くものだ。途中、コンビにで朝飯とランチを購入。山奥へ進む。よくもこんなほそいく、曲がりくねった道を飄々と運転できるものだと感心した。
最初のスポットに到着したが、最近の雨で川はかなりの増水。渓相がかなり変わっているとのこと。一応、トライということで竿を振ってみる。フライは18〜16番のパラシュート。岩の横の流れ、深み、緩やかな流れなどを「たたい」てみる。この「たたく」という実感をやっと会得した感じ。ラインはほんの2〜3フィートでリーダー、チペットを長めにセットする。最初の「たたき」でポチョッとヒットしたが、フックせず。小さいヤマメだろうと上流へ。その後富さん夫妻も同じようにチビヤマメに悩まされる。2,3箇所場所を変えたが同じような状態が続く。
「そろそろ、本命に行こうか。」
と、富さんの号令で本命の川へ。道路わきに車を止めて長い下り坂を降りていくと、そこは岩が適当に配置され、小さなスポットも数多く並んでいるようだ。皆、奥ゆかしくそれらの小さいプールを譲り合いながら少しずつ上流へ向かう。最初のチビヤマメはすれでかかった。かわいそうに煮干サイズのヤマメの横腹に刺さった針をそ〜っとはずし、リリースした。くっきりと入ったパーマークに感銘を受けしばしたたずむ。そのうちに空は曇り一気に振り出しそう。ポツポツからザーザーに変わり、水面にも雨のワッカがいっぱい。もともとライズの釣りではなし、たたいていけば釣れるだろう。
「なぁに、すぐにやみますよ。」
との富さんの言葉とは裏腹に雨がひどくなる。3人とも雨具の用意はなく、シャツも帽子もずぶぬれ、ウェイダーの中にまで水が入り込みズボンもパンツもびしょびしょ。それでもとフックし損ねたプールでしつこく「たたく」。やっと20cmほどの少年ヤマメが出てきた。(写真)。これで今日は終わろうかと、帽子のつばから滴り落ちる雨を顔に受けながら上流の富さんの顔を見上げると、「なあに、今からですよ」と言わんばかり。振り返り、下流のユカさんを見るとずんずんと上ってくる。背中がずんずんと冷えてくるのを感じながら
「富さん、今日はこんなもんですかね。そろそろですかぁ。・・・・ねぇ。」
というと、
「えーっ、もう上がりますか。」と不審気。熊本ではこのような土砂降り、豪雨でも平気らしい。二人で増水した川を岩を伝わりながら降りていくと、びしょびしょになりながらユカさんが
「あれっ、どうして降りてくるんですか?上流の方にヤマメがたくさんいるプールがあるのに。」
本当にこの人は東京育ちなのだろうか?3人合意の下に引き上げることにする。とりあえず濡れた服を「何とか峠」のトイレで脱ぎ、代わりの服に着替える。前に上ってきたくねくねの細い道を下るころには小雨になった。
「なんだか、変な気分だね。こんなに早く帰るなんて。」
ずぶぬれになったことでかなりアップセットしていた我が精神状態は、ユカさんの余裕のある言葉に複雑な思いになる。何はともあれ、美しいパーマークのあるヤマメちゃんにも会えたし、生涯忘れえぬ豪雨の釣りも楽しめたし、言う事無し。
雨で水かさが増した川辺川上流。 「何とか峠」での記念撮影。後ろに阿蘇外輪山が美しく・・・良くみえない。
富田夫妻の釣り後姿。 ユカさんなんぞは、こんな岩だらけの川ををヒョイ、ヒョイと跨いでいく。
「イヒッヒッヒッ。栗を見つけたぞ〜ぃ」 なんとまぁ、かわいいヤマメチャンでした。
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